修羅場⑤

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西条さんはすくっと立ち上がると、いきなり私のスマホを床に叩きつけました。

ドゴンッという鈍い音が、床に土下座している私の腹に響きます。

それから台所へ向かうと、戸棚の食器を一枚、また一枚も床に向かって投げつけます。
ガシャンガシャンと皿が破壊される音が、一定のリズムで響き渡ります。
西条さんは無言でひたすらその行為を続けました。
その間、私はずっと床に頭を擦り付けていました。
恐ろしくて恐ろしくて、顔を上げることができなかったのです。
ただただ、皿が割れる音を聞き、時が過ぎるのを待ちました。
何十枚もの皿が粉々になった時、西条さんがやっと言葉を発しました。
『その男出せ。連れてこい。』
おそろしく呪詛を含んだ声でした。
私は黙って床を見続けることしかできません。
『おい!』
無言の私。
『いやなの?』
西条さんの問いに、私は床に頭を擦りつけたまま、おそるおそる頷きました。
『なんで?その男が大切なの?』
『、、、、。』
『答えろ!』
西条さんが声を荒げます。
私は意を決して小さな声で言いました。


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【お詫び】

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ごめんなさい。

いつも日時を指定して、予約投稿しているのですが、
7月が31日まであることをすっかり忘れてしまって、今日の分の投稿、抜けてしまいました。
心配して下さった方、本当に申し訳ありません。
何事もやると決めたことは、最後までやらないと気が済まないたちなので、
豪田先生とのお別れを綴るまでは、ブログはやめません。
なので、これからもどうか忌憚ないご意見をお聞かせ下さい。
お叱りや軽蔑のお言葉は、あの日以来、全く私を責めない西条さんの胸の内を代弁しているようで、身にしみます。
もちろん、共感してくれるコメントはそれ以上に嬉しいです。
やめるとしたら、西条さんにこのブログの存在が知られてしまった時かな。
もしもブログがきれいさっぱり削除されていたら、その時はお察し下さい。


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修羅場④

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『1ヶ月前くらいにゴミ箱の奥からこれを見つけてね、、。

   なんで、こんなの飲んでんの?』
どこまでも抑揚のない西条さんの声。
私は何も答えることができません。
『なんでこんなもの飲んでるのかって、聞いてるんだよ!!!』
突然西条さんが大声をあげました。
西条さんが怒鳴るのを、この時初めて見ました。
『お願いだよ!全部正直話してくれよ!!』
西条さんの怒鳴り声は、ほとんど慟哭のようなものに、変わっていました。
私は全てを正直に打ち明けるべき時がきたのだと悟りました。
私にはもう、優しいこの人に嘘をつき、裏切り続ける程の気力は残されていませんでした。
あとはもう、全てを正直に打ち明け、誠心誠意謝り、それ相応の対価を支払い、お別れする道しかないのだと、恐怖と後悔でかすむ頭で思いました。
私は震える身体を何とか御しながら、床に正座をすると、豪田先生とのことをすべて西条さんに白状しました。
最初は身体の関係から始まったこと。
豪田先生を次第に好きになってしまい、結婚する頃には本気になってしまっていたこと。
引っ越してからも数回会っていたこと。
これからのことを、できるだけやんわり、でも真実だけを伝えました。
西条さんはソファーの上で頭を抱えて、黙って私の告白を聞いていました。
顔は見えませんでしたが、肩が震えているのがわかります。
私は話し終えると、頭を床に擦り付けて謝りました。
許して欲しかったわけではありません。
優しく誠実なこの人を、これ以上ないというほど傷つけてしまったことが、申し訳なくて申し訳なくてしょうがなかったのです。


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修羅場③

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私は震える手でスマホのロックを解除しました。

その手をじっと見つめる西条さん。
これだけで、後ろめたいことがあると、白状しているようなものでした。
西条さんは私のスマホを5分ほど無言で確認した後、はーっとため息をつきました。
『一昨日の夜は何してたの?』
と、聞いてきました。
何も答えられずにいる私に、
『すみれは患者が急変したってラインで言ってたけど、その時間の病棟のカルテを隈なくチェックしたけど、呼ばれるほどの急変患者いなかったよ。』
と、たたみかけるように続けます。
無言で俯く私、、、。
そんな私に、
『一昨日の夜中に着信ある豪田って誰?』
と聞いてきました。
震える手足。
ひどく息苦しくて、私は喘ぐように息をしました。
こんなになっても、頭の中では、 必至に言い訳を考えていました。
    まだ不倫だと、バレたわけではない。
    どうしよう。。
    
    酔っ払った友達ということにしようか、、、
そんな私の目の前に、小さな銀紙のようなものが差し出されました。
一目でそれが何か分かりました。
使用済みのピルのシートでした。
     なぜ、、、。
    
     何重にもティッシュでくるんで
              捨てていたのに、、。


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修羅場②

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『スマホ見せて。』

西条さんが片手を差し出します。
跳ね上がる心拍数。
『え、、。どうして、、、?』
平静を装って聞きます。
引きつった、さぞ醜い笑顔だったでしょう。
『いいから見せて。』
西条さんは無表情のままです。
こんな西条さんは初めて見ました。
拒否することなんてできません。
私は鞄からスマホを取り出しました。
    大丈夫。
  
    メールはネットワークに繋がないと
     見れないし、ラインもしていない。
     写真もない。
     電話も、、、
その時私はハッとしました。
一昨日の夜中に、先生から大量にかかってきた着信履歴を消し忘れていたのです。
後で消そう消そうと思って忘れていました。
全身がカッと熱くなりました。
あふれ出す汗。
心臓が猛烈な勢いで脈打ちます。
『ロックあけて。』
西条さんの平坦な声が、どこか遠くから聞こえてくるようでした。


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修羅場①2017年12月12日

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先生と別れてから、私は西条さんに『急患で呼ばれた。』とラインして、大学病院へ向かいました。

そして、当直室で仮眠して朝を迎えました。
寝不足でしたが、私はいつも通りに業務をこなしていました。
お昼になっても西条さんからラインの返信はありませんでしたが、大して気にはなりませんでした。
バレるはずがないと思っていたのです。
そして、その日は当直だったため、私は当直室で呑気にブログを書いたりして過ごしていました。
次の日家に帰ると、西条さんが珍しく私より先に帰っていました。
神妙な面持ちでソファーに座っています。
ドクンと私の心臓が波打ちます。
『どうしたの?』
私は無理矢理笑顔をつくって、西条さんに聞きました。
『当直明けで疲れているところ悪いんだけど、ちょっと座ってくれない?』
西条がちらりとソファーの横を見ます。
私は言われた通り隣に座りました。


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真夜中の逢瀬11

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私は一瞬躊躇しましたが、

次の瞬間には、吸い込まれるように先生の左胸に唇を押し当てていました。

ドクンドクンと心臓が脈打つのを唇ごしに感じます。
愛する人の命を司る場所、
その場所に自分の烙印を押すことは、どうしようもなく贅沢なことのように感じました。
私は、先生の身体中の血を全て吸い尽くすように吸い続けました。
唇を離すと、先生が私につけたもの以上に濃い痣がくっきりと刻まれていました。
『私のもの。』
先生の真似をして、私もその部分をなぞりながら言います。
私達は、顔を見合わせて笑いました。
そして、この痣が消える前に、絶対にもう一度会って、抱きあおうと約束しまして、私達は別れました。
      しかし、
      その約束が、果たされることは
                                        ありませんでした。
   
      私は大きなミスを犯していました。
      崩壊の時が近づいてました。


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真夜中の逢瀬⑩

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しかし、その手を途中で止めると、再び私のセーターをたくし上げました。
『ごめん。。もうちょっとだけ、寒いの我慢して。』

そう断ると、私の左胸下のちょうど心臓がある部分に唇を押しつけてきました。

熱い熱い唇。
時が止まったかのように、先生は私の胸下を吸い続けました。

真夜中の公園に、ときおり北風がピューっとふきぬける音だけが響きます。
それ以外は、物も、人も、動きを止めたようでした。
10秒か20秒か、、、しばらくして、先生は唇を私の胸から離したしました。
後には、くっきりと赤い痣が残されています。
先生はそれを愛おしげになぞりながら、
『俺のもの。』
と言って、笑いました。
それから、私の服装を正し、やさしく首にマフラーを巻き直してくれました。
『寒くして、ごめんな。もう一個だけお願い。』
そう言うと、先生も自分の服を胸までたくし上げます。
『すみれもつけて。』
恥ずかしそうに笑いながら、先生が言ってきます。


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真夜中の逢瀬⑨

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私達は、凍りつきそうな冬空の下で、しっかりと抱き合いました。

そうして、キスをしました。
ヒンヤリと冷えた唇が重ね合わされたかと思うと、先生の舌が凍える私の唇を舐め回します。
生暖かいそれがうごめく度に、私の唇は一瞬熱を持ち、そしてすぐに夜風に冷やされます。
しだいに先生は興奮してきたようでした。
ベンチに座っている私に馬乗りになると、私のマフラーをほどき、私の首に舌を這わせてきます。
唾液に濡れた部分だけが、夜風にいっそう冷やされ、先生の舌の通り道を示しているかのようでした。
徐々に下に降りてくる、先生の舌。
先生は私のセーターのブラを強引にたくし上げ、私の胸を舐め回します。
『先生、寒いよ。』
私の訴えを無視し、先生は私の乳首に執拗に吸い付き、舌先で弄びます。
先生の口に含まれた乳頭だけが、やけに生暖かく、それ以外の部分は、冷え切っていました。
それだけで、乳頭の感覚がより鋭敏になり、私の興奮も徐々に高まります。
しかし、、、寒さには勝てませんでした。
『くしゅんっっ!』
私のくしゃみで、先生は我に返ったようでした。
私の胸から顔を離すと、
『ごめん。風邪ひいちゃうね。。あーー。抱きてぇーー。』
そう言いながら、私が冷えないようにと、ブラとセータを元の位置に戻そうとしてくれます。


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真夜中の逢瀬⑧

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『私は絶対先生から離れていかないよ。絶対に。』

そう言って、私は先生の頭を何度も撫でました。
『ちくしょー。何で、立場逆転してんだ、、、。』
先生が恥ずかしそうに言います。
『ほんとだよ。』
私達は、顔を見合わせて笑いました。
おかしなことに、私は先生の隠された弱い部分や女々しい部分を知り、いっそう先生のことが好きになっていました。
例え、自分の人生を犠牲にしても、
例え、周りの人の人生を犠牲にしても、
例え、無垢な子供たちの笑顔を思い出し、途方も無い罪悪感に駆られたとしても、
例え、妻の座に君臨する奥さんを思い出し、惨めな敗北感に打ちのめされたとしても、
一生影でこの人を守っていきたいとすら、思いました。


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