彼につられるように歩いていたら
いつのまにか地下から地上に出ていて、
また、都会の夜の雑踏の中にいた。
駅で別れるつもりでいたのに、
駅を過ぎていた気がして、
「あれっ? どこまで行くの?」と彼に聞いた。
「ホテルまで送るよ…」と彼。
「え〜〜いいよ〜
わたしのホテルはどこ? 」
「あっちに見えるよ。」と彼は指さした。
前回はホテルの部屋まで送ってもらったのに、
今回はかたくなに遠慮してしまった。
「寂しくなるからここで帰って!」
と、彼の身体を押しやった気がする。
半分泣きそうになって、
半分ヤケクソになって、
半分意固地になってた。
そしたら彼は
じゃあ、ホテルの看板の前まで行くよ…
と言い
結局すぐ近くまで送ってくれた。
そのまま電車に乗れば
15分以上は早く帰らせてあげられたのに..
もちろん、
本音は寂しい。
でも早く帰してあげたい。
または、
どうせ抱き合わないんだから、早く帰ってよ!
とそんなやさぐれた気持ちもあった。
色んな気持ちが絡み合いながら、
見えなくなるまで手を振り合った。
彼とはいつもそうしている。
それは、かわらないまま。
3年前かな、
京都に旅行に行き、
別れ別れになるときなど、
彼がタクシーに乗るとき、
乗って発進するとき、
最初の角を曲がるとき、
次の信号で止まったとき、
動き出したとき、
見えなくなるまで、
とその都度手を振り合ったことがあって、
恋人同士なら当たり前かもしれないけど
よく遠くまでお互い判別できたよなぁと思ったことがあったし、
もう4年前くらいになるかな、
都会の街で別れた夜は、
彼が地下鉄の入り口に吸い込まれるまで
最後、300メートルくらいは離れていたと思うけど振り合ったこともあった。
それよりお互いに歳なので遠くのほうが見えるのか、
って笑い話になるのかもしれないが…w
今回は人が多くて、
わりとすぐに見えなくなった。
ホテルの部屋に戻ると
涙が出て仕方がなかった。
さっきまで楽しくてならなかったのに、
ぽろぽろ流れる涙…
この涙を彼は想像しただろうか?
あとになっても泣いたことは彼には言わなかった。
そして、
彼はどんな気持ちだったのだろうか?
Source: 女坂
