カフェはホテルの一階にあり、
通りに面して外が見えるが、
時間帯的にか静かだった。
大人はこういうところが良い。
広くて綺麗で、落ち着けた。
彼は、
「ここはいつできたのですか?」と
スタッフの方に聞いていた。
スタッフの方も感じが良かった。
メールチェックなどしながら、
それでも、彼はわたしをぽつんとさせないように、
話をしてくれた。
わたしは黙って彼を見たり外を見たりしながら
コーヒーを飲んでいるだけで幸せなのにね。
まったりとした時間が流れる。
でも、彼はおうちまで、3時間余りかけて帰らなければいけない。
寂しいというより、
早くおうちに返してあげなきゃ、と思った。
そのとき彼が言った。
「そうそう、誕生日プレゼントを買いに行かなきゃ!」と。
あまり時間がなかったけど、
そう言ってくれたし、
次回ゆっくりお買い物する?
と彼は提案もしてくれたけど、
彼に今日会えた記念のものが欲しかったので
買ってもらうことにした。
彼は、ある程度のものを買ってくれるつもりだったみたい。
アパレルかジュエリーの店に行こうよ、って言ってくれてたから。
でも、なんとなくわたしは遠慮をしてしまって、
リーズナブルなアクセサリーでいいかなって思った。
不倫だからかな。
独身同士の恋人じゃないし。
来てくれるだけでも
ご馳走にしてくれるだけでも
お金を使わせてるし…
ちょっとでも、ここは出しますと言うとダメだよ、と言ってくれるし。
こんなに、
誕生日、誕生日、って言ってくれた一日はなかった。
若くもなく、またひとつ歳を重ねるのに、
恥ずかしいくらいなのに。
でも
彼と、重ねてきた歴史と、
健康で彼に会えることは
本当に祝うべきことなのかもしれない。
心が暖かくなるのを感じながら
アクセサリーショップを目指し
彼と並んで歩いた。
空はずっと晴れていた。
Source: 女坂
