引用元: https://nova.5ch.net/test/read.cgi/livegalileo/1688883609/
――アニメ業界が現在抱えている喫緊の課題を具体的に教えてください。
植田益朗:まずはアニメーターの人材不足、スキル不足の問題があります。製作委員会方式が取られるようになってから、一社が大きなリスクを抱えるということがなくなったためアニメが作りやすくなり、放送する本数が劇的に増えました。その結果、当然ですがアニメの絵を作る原画や動画というアニメーターの仕事が猛烈に増えて回らなくなり、特に動画を海外に発注することが増えたのです。
かつて動画マンの仕事(※原画と原画の間に中割りを描き、動きを滑らかにしていく作業)はアニメーターの基礎訓練の場になっていたこともあったのですが、そこがすっぽりとなくなってしまったため、アニメーターとしての知識もスキルも足りていない新人が増えてしまいました。しかし目の前には大量の仕事があるため、とにかく手を動かさねばならず、結果、自分のスキルが今どうなのか、正しいことをやっているのかどうかさえわからない人材が大量に生まれることになりました。そしてそういったスキル不足のアニメーターの描いた絵をベテランの作画監督や総作画監督が修正したり、ときには描き直すことでなんとかクオリティを保っていますが、高齢化が進み、それも限界に来ていると感じています。
大量に来た仕事を人海戦術でこなそうとしたところ破綻が起き、それをまた人海戦術的な手法でカバーしようとしていますが、それは悪循環でしかなく、一部の仕事ができる人たちの負担が異常に膨れ上がってしまっています。
また、こういった人材不足はアニメーターだけに限らず、絵コンテマン、演出家、監督や制作進行、さらにはプロデューサーも人材・スキルが低下してしまっていると感じます。アニメ好きな人にはぜひ業界に入ってもらいたいと思いますが、同時に作品を俯瞰して見る目も養ってもらいたいと思っています。
製作委員会方式では、出資比率に比例して利益の分配を行うことが基本ですから、大きな資金を出資できない、製作委員会に入れてもらえない制作会社にはなかなか大きな利益が戻ってこないという図式があります。とはいえ製作委員会方式が悪なのかというとそういう訳でもなく、先述の通り複数の企業でリスクを分散し、また宣伝広告もそれぞれの立場から多様に行うことができるため、それまではアニメ化が難しかったニッチな作品や挑戦的な作品もアニメ化しやすくなったというメリットがあります。
昨今世の中を騒がせているアニメ作品も、この方式でなければここまで大々的な広告はできず、結果としての収益ももっと低かったかもしれません。とはいえ、現実として末端までお金が届かないという現状はもう少し改善すべき課題だとは感じています。例えば制作会社にも著作権の一部のロイヤリティを持たせる、一部の企業がすでに乗り出しているように作品の版権の一部または全部を管理する役目を持つなど、方法はあると思いますので業界全体の問題と捉えて取り組んでいきたいと考えています。
ヤマト:昔と今では様々な状況が違いますから一概には言えませんが、昔はアニメーターを始めた頃は「丁稚奉公」に近かったのかなと感じます。お金を稼ぐよりもスキルを身につけることが優先、というか。衣食住が保証されていないので丁稚さんよりも条件は悪いですが(笑)ですがアニメーターも絵を描きキャラクターに芝居をさせる表現者ですから、始めてから短時間でなんでもできるようになるといった職種ではありません。その意味で下積みはどうしても必要になります。
今はその下積み期間で、昔ほど先輩から教わることができないという点が大きな課題です。先輩から教わることができずスキルが伸びなければ、賃金も思ったようには伸びず、そこで離職してしまう。そうするとさらに人手不足となり、さらに教育に割く時間がなくなる…そういった悪循環もあります。
あとは全体的に、アニメクリエイターは交渉が得意でないという性質の問題もあると思います。苦しい!という主張がなければ、それで大丈夫なのだとみんな思いますよね。もっと様々な国のクリエイターたちがどうやって権利交渉しているかなどを勉強し、良いところは見習い、活かすことも大事だと考えています。
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Source: なんJ PRIDE
アニメ制作業界、グチが止まらない